その他の研究会等

2022年3月6日オンライン開催「フェニキア・カルタゴ研究会第7回公開報告会」

オンライン研究会の案内をいただきましたのでお知らせします。

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フェニキア・カルタゴ研究会第7回公開報告会
3月6日(日)(Zoomによるオンライン)

昨年度に引き続き、今年度もオンラインでの公開報告会を下記の要領で実施いたします。
前半では、フェニキア史の周辺ともかかわる古代オリエント史の分野からの発表に加え、西方フェニキア人社会の重要な拠点、サルデーニャ島のポエニ文化について考察します。
後半では、カルタゴにも関係する古代北アフリカの農業について、新たな科研のテーマをもとにした研究成果の発表も盛り込みました。さまざまな方向性からフェニキア・カルタゴ研究の「今」に迫りたいと思います。是非、多くの皆様のご参加をお待ち申し上げております。

申込先は以下の通りです。
参加をご希望の方は、3月4日(金)までに下記のフォームからお申込み下さい。3月5日(土)までに当日のリンク先など参加方法をお知らせします
https://forms.gle/LZB7PNCpRQi8UqLf6

プログラム
13:15 入室開始
13:30 開会の辞・第1部趣旨説明 佐藤 育子(日本女子大学)
13:40 「都市アッシュルにおけるエジプト人アーカイブに関する一考察」丸小野 壮太(常磐大学高等学校)
14:15 「サルデーニャ島におけるポエニ文化:前6−前3世紀を中心に」青木 真兵(関西大学)
14:50 休憩(10分)
1500  第2部趣旨説明    大清水 裕(滋賀大学)
15:05 「後2世紀属州アフリカの皇帝所領における農業経営と小作人を取り巻く権利関係」宮坂 渉 (筑波大学)
15:40  ディスカッション
16:00  閉会

主催 フェニキア・カルタゴ研究会
JSPS科研費
21H00584(研究代表者 大清水裕)
古代ローマ期北アフリカの農業に関する学際的研究
20K01237(研究代表者 宮坂渉)
古代ローマにおける取引実務の実像と担保法理論への影響に関する研究
16K03131(研究代表者 佐藤育子)
地中海におけるフェニキア・カルタゴ文化の発展と変容

発表要旨

丸小野報告
前1千年紀前半において古代東地中海世界を支配した新アッシリア帝国はアッシリア人だけではなく、フェニキア人、アラム人、エジプト人など様々な出自を持つ人々によって構成されていた。近年、都市アッシュルにおけるエジプト人アーカイブに関して言及した先行研究[Karlsson, M.(2021a・2021b)、Höflmayer, F. (2021)、Wasmuth, M. (2021)]が複数出版されている。そこで、本発表では2020年に提出した卒業論文『新アッシリア帝国とエジプト人ー都市アッシュルにおけるエジプト人に関する考察ー』を2021年に出版された先行研究も踏まえ、都市アッシュルにおけるエジプト人アーカイブに関する一考察を行う。

青木報告
私の研究目的は、西地中海においてカルタゴの支配下にあったフェニキア植民都市への分析を通じて、カルタゴからローマへと支配者が変わっていく西地中海世界の様子を地域の視点から明らかにすることである。
以前、この観点から新ポエニ語とラテン語の二言語併用碑文への分析を通じて、サルデーニャ島の「ローマ化」の一側面を考察した※。この考察では、二言語併用碑文においてラテン語には刻まれず、新ポエニ語にのみみられるフェニキアの神への献辞があったことが分かった。本発表では「ローマ化」以前の状態を明らかにするため、サルデーニャ島におけるポエニ文化について、フェニキア人と現地コミュニティの関係を通じて考察する。
※拙稿「サルデーニャ島のフェニキア人と『ローマ化』—都市スルキスの二言語併用碑文から—」『駒沢史学』84号、133-145頁、2015年。

宮坂報告
19世紀末から20世紀初めにかけて北アフリカ(チュニジア、アルジェリア)で相次いで出土した石碑文は、紀元後2世紀の元老院属州アフリカにおける皇帝所領での農業経営に関する貴重な情報を伝えている。例えば、小作人coloni−「賃借人conductores」−所領管理人procuratores−皇帝という重層構造、小作人からの請願とこれを処理するプロセス、多様な作物と土地利用、小作人に課される賃料と賦役等である。とりわけ、碑文に見られる所領管理人からの書簡において言及され、土地の利用と土地に対する権利関係とを規定すると考えられるlex Hadriana(LH)については、その内容と、関連するlex Manciana(LM)との関係性とが、Rostovtzeff、Flach、Kehoeらによって盛んに議論されてきた。本報告では、LHとLMに言及する碑文を紹介し、当時の農業経営と小作人を取り巻く権利関係を概観する。なお、1999年にはさらにLHに言及する碑文が、2013年と2016年にはLHの文言そのものを伝えるとされる碑文が出土しており、今後も議論の進展が期待される。